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阿・吽 おかざき真里/小学館

川崎大師に参ったらこの漫画について書こうと決めていた。最澄空海(後の弘法大師)の物語だ。今、個人的に一番新刊を楽しみにしている作品でもある。

 

出家する前から優等生で、しかし出家する前も後も、苦しみの中に居続ける最澄と悟りの境地を求める余り体を蔑ろにしてしまう野生児のような空海。各々が仏の教えに対する「才能」(と呼んでいいのかわからないが)がありすぎて、二人がそれぞれに思うことを完全に理解できるのがお互いしかいない。

最澄は既にたくさんの弟子を抱えているし、空海は「人たらし」とまで呼ばれ、友人に多く恵まれている。

それでも、周りの他の人間は、彼らの思想を完全には理解できない。

主人公二人は要所でしか顔すら合わせない。なのに、そういう繋がりが確かに存在していることを表す描写が随所にある。

自分がネタバレ回避派なので、内容を詳しく書くのは控えるが仏教・日本史の話、とだけ考えて「難しそう」と引かずにぜひ読んでみてほしい。絵にも話にも迫力があり、当時の世相と相まってなぜあの二人があの時代に必要とされたかが知らぬ間にちゃんと読み取れるようになっている。

読むたびに鳥肌が立つし、涙が出る。

今にも続く仏教の大流派の開祖たちはこんなにも壮絶な人生を送っていたのか、と前から好きだった寺社仏閣巡りが趣味として少しだけ深まった気がする。

 

物事は常に多面である。

極論は刺激的だし、身を任せてしまえば世が単純に見えて楽にはなるが、私たちは考えることを辞めてはいけない。

そして、自分と同じように他人にも考えがあり、基本的には互いに否定されてはならない。

大昔の、想像を絶する痛みと、悲しみと、絶望を超えて、自らの悟りを広めてくれた人々の物語は、現在の人々が忘れがちなことを思い出させてくれる。

 

※念のため断っておくが、私は極めて日本人的な無宗教者である。特定の宗教を支持・信仰することを推奨しているわけではなく、逆にどの宗教も否定はしていないことを申し添えておく。この記事で語ったのは私の好きな漫画とその感想である。

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