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楽しんだ時間の記録と整理

フラメンコ発表会

前日のリハーサルの時から“本番はあっという間”だと先生方に言われていた。

そして、終わってみて確かにその通りだと感じる。

朝早くから集まり、備品の準備をしたり着替えやメイクをしたりしているとあっという間に場当たりの時間になった。全演目の出演者が入れ代わり立ち代わり舞台に立ちフォーメーションごとの立ち位置を確認する。先生は全体の調整をしながら自分の出番も確認している。それも終われば後は裏方の方々の微調整の時間となり、私のようなただの出演者の端くれはまた楽屋に戻って崩れたメイクを直し、簡単に昼食をとった。

そんなことをしている間にあっという間に本番の時間がくる。500人収容のホールはほぼ満席となっていた。

率直に書いておこう。私はあんなに本格的な舞台に立つつもりでフラメンコを始めたのではなかった。歌も演奏もすべて生、しかも先生の人脈でかなり一流の方々が付いてくださっていた。私のような始めたばかりのレベルの人間が本来あのような方々の演奏でなど踊れないのだ、と打ち上げの席で先生に伺った。

何事もやってみるものだ。やってみなければ絶対に経験できないことだった。

そして、もっと練習できたはずだと1か月経った今思う。本番の後、一緒に出た皆さんが口々に「たくさん間違えてしまった」と言っていて、私も例外ではなかった。正しく踊れるかどうか、というより、もっと思いきり踊れるくらいになっていたかった。

私を含む入門クラスがメインで出演させていただいたのが“Tango de Málaga”(タンゴデマラガ=タンマラ)と”Sevillanas”(セヴィジャーナス=セビ)の2曲である。詳しくなくて申し訳ないのだが、セビはフラメンコを習い始めた人は全員必ず最初に履修するのではないだろうか。2人1組で踊る非常に有名なお祭りの曲で、スペインでは子供から大人まで誰もが踊れるらしい。どこで習おうと振付が共通なので、セビを知っている人となら誰とでもペアが組める。

衣装を買いにフラメンコ専門店に行ったとき、右も左も分からなさ過ぎて店員さんに「初めての発表会の衣装を探しに来ました」と助けを求めた。その際、店員さんの方から「セヴィジャーナスですね?」と言われたほどなのだ。

一回教室のクリスマス会でのステージでやって、今でこそ“お祭りの曲なので笑顔で踊る”が意識できるようになってきた。今回のステージでは隣のペアと腕が当たってしまうくらい大人数で踊った上に、私のペアは先生だったので随分のびのびと踊らせてもらった。

タンマラもカタカナで正式名称を検索すればごまんと動画が出てくる。哀愁の漂う曲調で、振り付けにキレがある。その分難しい。スピーダという一定のステップを繰り返しながら段々テンポを上げていく部分はギターと呼吸を合わせなければならないのに焦ると我々の足が先走ってしまい、最終的に自分たちでも追いつけない速度に上がってしまうことが練習で多々あった。皆で落ち着こう、よく聴こうと声を掛け合い、本番では一番きっちり合わせられたのではないかと思う。

今思い返すと、入門レベルでできるギリギリくらいの絶妙な難しさだった。

完璧には出来なかったが、ステージで皆と息を合わせられたのを感じた。終わった後、ステージに一緒に上がった人たちは皆、「大人の部活だ」と言っていた。これも、なかなかできない経験である。

もう30代半ばで、学校を卒業して10年以上まともに体を動かしてこなかった自分がどんなにやってもそうそう上手くはならないことは自分が一番よくわかっている。だが、始めた当初は爪先だけで床を打つ、と言われてもすぐには出来ないほど運動神経が鈍っていた自分が、人前でなんとか踊りを披露できるところまでこぎつけられたのだ。

やってみたいと思ったことは早く始めた方がいい。そして、続けたいと思えるのなら存分に努力をするのが良いのだろう。

今回ステージに上がった入門の生徒は皆、初級に昇格することとなった。

皆、仕事か世帯を持っている大人で、一番若い方でも今年就活である。次回の発表会は2年後だと聞いている。今回と全く同じメンツでステージに上がることは2度とないだろう。自分だって2年後、どうなっているかわからない。良い縁があったことに感謝し、また皆と一緒に頑張っていきたいと思う。

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